社会問題のお金による対処手法への疑問

社会問題の解決をお金の動かし方に求める考え方に根本的な間違いがある。お金はコミュニケーションツールであるため、人々の互いの意志疎通に分裂をもたらす。お金の動かし方に問題解決を求めれば、人々の動機はお金に向かい、互いの意志疎通は滞り、各人の同意は拡散するのである。
モノ・サービスの生産技術向上と物流インフラの拡充により、お金の機能のひとつである価値の貯蓄の必要性が減少した。インターネットが登場したことで、お金のコミュニケーションツールとしての機能の意義は低下した。目下社会構造上の機能しなくなりつつある媒体である。お金の決定的な価値の消失にはもう1つの要因があればいいのであるが、それは人々の活動をボランティアを基にした動機へシフトすることである。
問題解決をお金の動かし方に求めることで、人々の目線はお金へ向き、社会問題の本質からそれるのである。個人はお金を持つことで、他者とのコミュニケーションを取らずとも、力を持ち自ら生活を満たすことができる。それゆえ人々の心の向きはバラバラになり、社会構造上の問題に対する議論が行われ難いのである。

自己愛の肥大化が個人的、社会的問題を複雑化している。個人と社会がそれらを克服できれば、社会構造のロスは軽減できるのである。